健二がゆく〜志士迷走記録〜

Kenji, was er nach der Rückkehr in die Heimat als Fußballtrainer macht, wo die Sonne aufgeht

ゴールキーパー探し不要の国 ドイツ

ドイツでは、上は成人の女子チームから下は7歳以下のチームまで指導した。今回は小学校3年生以下(U9〜U7)のチームを担当していた頃のことを思い出してみたい。

 

試合当日、集合場所に集まった選手たちから1対1で話し掛けてくるパターンとしては、大きく分けて二通りあった。一つ目は「ねぇ、健二。今日、僕キャプテンになりたいんだけど、いい?」で、二つ目は

 

「ねぇ、健二。今日、僕ゴールキーパーやりたい!」

 

である。

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ドイツではゴールキーパーの人気はとても高く、最悪の場合は10人いる選手たち(ドイツでは7人制なので、チームは大概10人程度で組織されている)、全員が手を上げてゴールキーパーのユニフォームの争奪戦(ドイツではユニフォームはクラブ持ち。指導者がワンセットとして、更衣室へ持ってくるもの)のゴングが鳴ってしまったこともあった。

最初の頃(U9〜U7の指導歴8年)はその日の対戦相手を見て、相手チームの力に見合った選手をその試合のゴールキーパーにしていた。つまり、相手が強いと見ればチーム内で一番上手な選手を選び、相手チームが弱いと見れば普段ゴールにあまり立っていない選手を選んだ。もちろんその選手がその日、ゴールへ行くことを望んでいれば、である。

 

子供たちは忘れっぽいので、試合前の更衣室でのGKユニフォームの端を掴みあっての争奪戦がたとえかなり激しかったとしても、試合を経てみると、みんな忘れていた。

なので、いつも試合前の更衣室で一触即発の事態になることを毎週のように経験していたが、ある時もっといい方法を思いついた。

 

ゴールキーパーの予約制(ローテーション)

 

である。上述のようにその日の相手や、次の週の相手などを考え、適切な能力の選手を選ぶものの、選ばなかった選手にもいつの試合のゴールキーパーになれるか?試合を割り振った。この方法は当たったようで、選手たちは妙に納得して、みんな声を張り上げなくなった。
有難や、有難や、試合前の無駄な討論の時間を、一気に削減することに成功した。

ここまで読まれてきて、『日本だと、逆だなぁ!ゴールキーパー探しにあくせくするけどなぁ』と思われた読者も多いと思う。自分自身も三鷹市で小学生を教えていたときには、同じように感じていた。

 

ではなぜ、ドイツ人の子供たちはゴールキーパーになりたがるのか?選手たちに直接聞いたことはないので、あくまでも私の想像の範囲内に過ぎないが、ドイツ人は特別なものにとても強い憧れを持っている。

先の例のキャプテンも然りである。自分だけが腕章を付けることを許されて、特別な存在になれることが、彼らの頭の中にある「誇り」を司っている脳神経をくすぐるのではないだろうか。

子供たちのゴールキーピングでの特徴は、勇気がある。これはうまい選手も下手な選手も一貫して言えることだ。仮にキャッチやフィスティングなどが下手くそであっても、ボールへ行くべき場面では必ずボールへ行っている。

日本人の子供たちのゴールキーパーと比較して、大きく違う点だと言えるだろう。失敗を恐れていないのが、その理由だと思われる。その試合で与えられた自分だけの「特権」を行使したい、「特別さ」をみんな(チームメイトや保護者たち)に見せたいのだと解釈している。

 

ということで、ゴールキーパー探しについては、日本と全く反対の状況をドイツで経験した。シーズンを通してみると各選手少なくとも一回は、それぞれ試合でゴールキーパーになっていた。

 

さて話は全く変わるが、サッカークリニック1月号が、明日発売される。今回の特集は「ゴールを狙い、ゴールを守る」で、

 

「連続写真で学ぶ ドイツ流の1対2の守備戦術」

 

という私の考えを表現したものも掲載されている。

先月号(12月号、11月6日発売)の「サイドでの『1対1』の数的同数なら、相手をボールごとタッチラインで挟む」の延長線上にある、グループ戦術の第一歩である、2人(SBとCB)での守備の仕方について書いた。12月号と1月号を通じ、サイドでの個人戦術とグループ戦術の関係を、できるだけわかりやすく説明したつもりだ。

守備戦術後進国である日本の指導者の皆さんに、ドイツでのやり方をこの二つの記事を通して共有できたならば、とても嬉しく思います。

ご興味のある方は、ぜひご購読ください。明日、発売です(くどいか?)!よろしくお願いします。