健二がゆく〜志士迷走記録〜

Kenji, was er nach der Rückkehr in die Heimat als Fußballtrainer macht, wo die Sonne aufgeht

成功で達成感を得る

f:id:Kopfballmonster:20170820152258j:plain

前回のブログで練習における日本人とドイツ人の違いについて書いたが、今回はちょっとその延長線上での話をしてみたい。

写真はミュンヘン東部にあるSV Heimstetten(エス・ファウ ハイムシュテッテン)のD-ユース(13歳以下)が、試合直後に優勝した喜びから人間ピラミッドを作ったときのものだ。16勝4分2敗で2位と8勝ち点差をつけ、3部リーグから2部リーグへの昇格を決めたシーズンだった。

 

苦労(疲労感)で充実感を得る日本人と、勝利(成功)で達成感を得るドイツ人

 

今夏休みで、サッカーのチームは合宿真っ盛りのシーズンだ。この季節になると、私が以前にお世話になったチームで合宿を控えていたある日、練習後に保護者の代表と話していて話が噛み合わなかったことを思い出す。

 

代表からのお願いは「今度の合宿では、帰りのバスの中で子供たち(選手たち)が全員寝てしまうような、そのぐらいきつめに練習をやってもらいたい。練習時間は2時間と言わず、もっと長くやってほしい。回数も1日に2回じゃなくて、3回でも4回でも構わない」というものだった。

 

ドイツでは青少年も90分間の練習をしているので、「私個人としては2時間の練習はすでに長過ぎると考えていて、90分で効果的な練習をしたい。もちろん合宿を通じて、選手全員を上達させたい」と答えた。

 

「ダメです。もっと長くやってください。去年の合宿の帰りのバスの中はとてもうるさくて、そこで思ったんです『ここでふざけているのではなくて、この子たちはもっと(長く、きつく)練習するべきだった』と。今年の合宿に臨んで選手たちは今皆、まるで声を合わせるかのように「俺はこの合宿で変わるんだ。上手くなるんだ」と同じことを言っています。その願いを叶えてあげてほしいのです」というのが、主旨だった。

 

ドイツでの話を参考に出してみても受け入れられず、朝礼台を挟んだ両者の話は平行線に終わり、結局その日に結論は出なかった。

 

そんな視点でドイツ人を見てみると、ドイツ人は勝利や成功で達成感を得ていると感じる。そのために、まっしぐらに突き進む国民であると。そして、できるなら苦労などしたくないと望んでいる。

つまり彼らが見ているのは、ないしは目標としているのは、例えば試合当日であれば、「その日の試合の勝利」だけである。そこへたどり着くために、各人がベストを尽くす。グループやチームとしての共同作業が必要であれば、それにも各自の持てるだけの力を存分に注ぐ。

 

この点において日本人は、違う場合が多いのではないだろうか?目先のことに眼が行ってしまう、きらいがあるからである。上の例で言えば、もちろん試合での勝利は達成したいのは山々だと思いながらも、現実の今目の前で次から次へと変化する試合の流れの中で、個々のプレーのことに終始してしまいがちではないだろうか?

 

目標を忘れてしまうと、個々のプレーにおいて、それがチームにとって有益なことなのか?無益なことなのか?判断し辛くなってしまう。つまり、目標を見失ってしまうということに陥る。

 

94年にミュンヘンへ行った際に、偶然にも「日本サッカーの父」と言われるDettmar Cramer(デットマー・クラマー)さんとばったり会ったときのことを思い出す。クラマーさんは当時ヨーロッパで最大にして最も施設の整った、素晴らしいSportschule Oberhaching(シュポルトシューレ オーバーハッヒング)の完成の様子を一人で見学に来ていた。

 

丁度そのとき、シュポルトシューレで開かれているサッカーキャンプの参加者で作った急造のドイツ人チームと日本から遠征して来ていたジュニア・チームとの間で、フレンドリーマッチが行われた。

すると試合が始まってある程度の時間が過ぎたとき、クラマーさんがくるっと後ろを振り向き、我々に言った「今ボールを日本人チームが持っているけど、攻めてるゴールを後ろへ引きずりフィールドから外してしまっても、日本人選手は誰もそのことに気づかず、そのままプレーを続けるよ」と。

 

どういうことか?と訊ねると「逆に、ドイツ人が攻めているゴールを外したら、その瞬間にドイツ人選手のプレーが止まり、「おーい!そのゴール使っているんだから、元に戻してよ!」というはずだ」と返って来た。

さらに続けて「昔私は日本代表を指導したことがあるから知っているけれども、この点が日本人の特徴的な気質なんだよ」との説明が付け加えられた。

 

ドイツ人は、できるだけ苦労はしたくないと思っている。だから、例えば専用工具が大好きである。我々日本人の感覚からすると、『その工程だけにしか使えない工具じゃ、必要ないのでは?』と思うくらい千差万別な、たくさんの工具を揃えることに躍起になる伝統的な血筋があるように見える。十分な準備をしている自分を、自ら誇りにさえ思っているような雰囲気を醸し出す。

 

ドイツ人は便利な工具を使って、早く仕事を終え、早く家へ帰ろうと考えている、と思える。その根本は、本当に人間として素直で会って、できれば働かないで生きていきたいという所から出発しているように感じる。

 

話が少し脱線したようだが、ドイツ人が目標へ向かいまっしぐらに駆けていく様は、我々日本人が見習わなくてはいけない点の1つだと思う。「猪突猛進」と揶揄される部分だが、その勢いたるや、尊敬の対象として十分の価値がある。

夏の合宿の話に戻すと、合宿でやるべき点を挙げて目標を立て、それを叶えるべく1日の予定を計画し、例えば合宿の帰りのバスの中で、どれだけ目標を達成したのか?について、選手たちも含め話し合う場にできればいいのではないだろうか?そこで、合宿に参加した全員でどれだけ目標へにじり寄ることができたのか?を確認し、達成感を共有することができたなら、最高なのではないだろうか?

 

そして例え、目標を達成できなかったとしても、逆に課題を見つけたとポジティブに捉えればいいと思う。チーム全員で、同じ問題意識を持てたことを喜べばいいのではないか?

 

どのみち人生においても、課題が尽きることはないのだから。
人間、死ぬまで勉強!

 

残り少なくなった夏休み、子供たちが素敵な思い出を作ることができるよう願っている。