健二がゆく〜志士迷走記録〜

Kenji, was er nach der Rückkehr in die Heimat als Fußballtrainer macht, wo die Sonne aufgeht

ゴールキーパー探し不要の国 ドイツ

ドイツでは、上は成人の女子チームから下は7歳以下のチームまで指導した。今回は小学校3年生以下(U9〜U7)のチームを担当していた頃のことを思い出してみたい。

 

試合当日、集合場所に集まった選手たちから1対1で話し掛けてくるパターンとしては、大きく分けて二通りあった。一つ目は「ねぇ、健二。今日、僕キャプテンになりたいんだけど、いい?」で、二つ目は

 

「ねぇ、健二。今日、僕ゴールキーパーやりたい!」

 

である。

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ドイツではゴールキーパーの人気はとても高く、最悪の場合は10人いる選手たち(ドイツでは7人制なので、チームは大概10人程度で組織されている)、全員が手を上げてゴールキーパーのユニフォームの争奪戦(ドイツではユニフォームはクラブ持ち。指導者がワンセットとして、更衣室へ持ってくるもの)のゴングが鳴ってしまったこともあった。

最初の頃(U9〜U7の指導歴8年)はその日の対戦相手を見て、相手チームの力に見合った選手をその試合のゴールキーパーにしていた。つまり、相手が強いと見ればチーム内で一番上手な選手を選び、相手チームが弱いと見れば普段ゴールにあまり立っていない選手を選んだ。もちろんその選手がその日、ゴールへ行くことを望んでいれば、である。

 

子供たちは忘れっぽいので、試合前の更衣室でのGKユニフォームの端を掴みあっての争奪戦がたとえかなり激しかったとしても、試合を経てみると、みんな忘れていた。

なので、いつも試合前の更衣室で一触即発の事態になることを毎週のように経験していたが、ある時もっといい方法を思いついた。

 

ゴールキーパーの予約制(ローテーション)

 

である。上述のようにその日の相手や、次の週の相手などを考え、適切な能力の選手を選ぶものの、選ばなかった選手にもいつの試合のゴールキーパーになれるか?試合を割り振った。この方法は当たったようで、選手たちは妙に納得して、みんな声を張り上げなくなった。
有難や、有難や、試合前の無駄な討論の時間を、一気に削減することに成功した。

ここまで読まれてきて、『日本だと、逆だなぁ!ゴールキーパー探しにあくせくするけどなぁ』と思われた読者も多いと思う。自分自身も三鷹市で小学生を教えていたときには、同じように感じていた。

 

ではなぜ、ドイツ人の子供たちはゴールキーパーになりたがるのか?選手たちに直接聞いたことはないので、あくまでも私の想像の範囲内に過ぎないが、ドイツ人は特別なものにとても強い憧れを持っている。

先の例のキャプテンも然りである。自分だけが腕章を付けることを許されて、特別な存在になれることが、彼らの頭の中にある「誇り」を司っている脳神経をくすぐるのではないだろうか。

子供たちのゴールキーピングでの特徴は、勇気がある。これはうまい選手も下手な選手も一貫して言えることだ。仮にキャッチやフィスティングなどが下手くそであっても、ボールへ行くべき場面では必ずボールへ行っている。

日本人の子供たちのゴールキーパーと比較して、大きく違う点だと言えるだろう。失敗を恐れていないのが、その理由だと思われる。その試合で与えられた自分だけの「特権」を行使したい、「特別さ」をみんな(チームメイトや保護者たち)に見せたいのだと解釈している。

 

ということで、ゴールキーパー探しについては、日本と全く反対の状況をドイツで経験した。シーズンを通してみると各選手少なくとも一回は、それぞれ試合でゴールキーパーになっていた。

 

さて話は全く変わるが、サッカークリニック1月号が、明日発売される。今回の特集は「ゴールを狙い、ゴールを守る」で、

 

「連続写真で学ぶ ドイツ流の1対2の守備戦術」

 

という私の考えを表現したものも掲載されている。

先月号(12月号、11月6日発売)の「サイドでの『1対1』の数的同数なら、相手をボールごとタッチラインで挟む」の延長線上にある、グループ戦術の第一歩である、2人(SBとCB)での守備の仕方について書いた。12月号と1月号を通じ、サイドでの個人戦術とグループ戦術の関係を、できるだけわかりやすく説明したつもりだ。

守備戦術後進国である日本の指導者の皆さんに、ドイツでのやり方をこの二つの記事を通して共有できたならば、とても嬉しく思います。

ご興味のある方は、ぜひご購読ください。明日、発売です(くどいか?)!よろしくお願いします。

難しいことを頑張るのではなく、簡単なことで成功する!

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仕掛けることをためらう日本人選手たち

 

「仕掛ける」というと、多くの方が「攻撃」でのことを思い浮かべるかも知れない。もちろんサッカーにはその場面もあるが、ここでは「仕掛ける守備」について書いてみたい。

 

日本では、相手チームがボールを持っているときに、守備をするチームはただ単純にボール保持者の出方を待っているだけにしか見えない。うかつに飛び込めばかわされるため、ある程度近くまでは寄るが、そこからは何もしない。ただひたすら受動的に対応し、ボール保持者に付いて回り、文字通り右往左往するだけ。

 

この場面から起こりうることを選手たちが知らないから、何も手を出さないようにしているとしか私の目には映らない。

つまり、この部分(守備)の物語を知らない。起こりうることを知っていて、自分たちに有利になる状況、次に自分たちが欲しい場面の作り方は、「守備戦術」である。

 

このシーンでは守備戦術が抜け落ちているため、うかつに近寄りあっさりとかわされ、フィールド脇からは監督の叱咤激励(?)が飛び、ファン(親たち)の間からは深いため息が漏れる。この「負の連鎖」とも言えるネガティブな反応を恐れ、ただひたすらボールを見つめるだけに徹する姿が日本では横行している。

残念ながら

 

現在の日本は、守備戦術の後進国

 

であると言わざるを得ない。

 

現時点での世界チャンピオンであり、FIFA世界ランキングでも世界1位(日本は44位)のドイツに話を移そう。

ドイツでも5部、6部リーグを境にして、そのリーグから下は皆(地域によっても違うが、12部くらいまでリーグは存在)、マンツーマンディフェンスだ。つまり、大半のドイツ人はマンツーマンしか、知らない。『えっ?」と思われる方も多いことだろう。

ドイツ代表やブンデスリーガのチームを見ていると、ドイツのクラブは草の根から皆、さらに子供たちから、モダンなゾーンディフェンスでプレーしているかのような印象を受けてしまいがちだが、現実には違っている。

 

理由は、簡単だ。ゾーンディフェンスを指導できる指導者がいない。私が14年半住んだ市内にある、とあるクラブ(9部リーグ)で起きた公式戦での出来事がいい例になると思う。

ゾーンディフェンスを良く知らない監督さんが、彼のチームを前半「ゾーンディフェンスもどき」でプレーさせた。アウェイとして戦う相手チームは、強いて言えばやや劣る相手だった。にもかかわらず、前半を終えて0対3とアウェイのチームが、試合をリードした。

 

私はその監督さんの技量を見るために観戦していたので、前半だけを見て家に帰った。あとで、ホームチームの選手に、その試合の顛末について話を聞く機会があった。

ハーフタイムは更衣室で、揉めに揉めたそうだ。選手たちは一丸となって、監督へ後半は元々のリベロ・システムへ戻すことを直訴し、監督もそれを受け入れざるを得ず、後半は前半に行ったゾーンディフェンスを捨てマンツーマンで戦い、同点まで漕ぎ着けたとのことだった。

 

ここで言いたいのは、もちろんゾーンディフェンスが欠陥を持った守備戦術だとか、一般のサッカー選手には難し過ぎる戦術であるとかではない。

この試合での問題は、この監督さんがゾーンディフェンスはその名の通り、フォーバックであれば横幅を単純に4人のディフェンダーで分配して守るだけのものと、勘違いしていたことに起因する。4人のディフェンダーはそれぞれ、間隔を保ちながら真っ直ぐに後退し、相手FWは二人のディフェンダーの隙間を突いて裏へ飛び出し得点していた。

 

誰も語らないが、ドイツでも(残念なことに日本でも)問題なのは、例え指導者がドイツサッカー協会からFußballlehler-Lizenz(S級ライセンス)を取得していても、ゾーンディフェンスを知らない指導者が存在することだ。私はこの目で、何人かの実例を見た。

ただ、「仕方ない」とも言える。それは彼らが指導者ライセンスを取得した時代には、現在のゾーンディフェンスが存在していなかったからだ。当然指導者養成のプログラムにも、ゾーンディフェンスは入っていなかった。ゾーンディフェンスの概念だけは、あったはずだが。

 

私自身も山雅サッカークラブ(現在の松本山雅FC)で、当時の3部リーグに当たる「北信越リーグ」でプレーしていたが、当時はやはりマンツーマンディフェンスだった。もっとはっきり言えば、チームの中には「スウィーパー」が存在した。

つまり現役時代(ドイツも含め)にゾーンディフェンスでプレーした経験を、私は1秒たりとも持っていない。

決して自慢話をしたいわけではないが、ゾーンディフェンスを指導できるかどうか?は、ひとえにライセンスを取得した後、それだけに満足せず、自分から湧く興味でサッカーを追い続け、新しいサッカーについての理解を深めるよう、常に努力し続けて来たかどうか?が問われることになると考えている。

 

話を一番最初の日本での試合中のシーンへ戻すと、むやみやたらに、ともかくボール保持者へ、寄せればいいというものではもちろんない。早く寄せても下手に詰めれば、簡単に抜かれてしまう。

第1ディフェンダードリブラーの進行方向を限定することなく身勝手なことをすれば、第2ディフェンダー以下後ろに居る多くの味方は反対サイドへ寄せるなど、もう一度ポジションを取り直さなければならない、新しく対応を迫られる状況となってしまう。

そんなことが度重なれば無駄走りが多くなり、まさに「骨折り損のくたびれ儲け」だ。肝心な場面で、必要なエネルギーを持ち合わせず、ゴールチャンスを潰してみたり、ピンチに何の抵抗もできないまま失点を許してしまいかねない。

 

このような場面で使ってもらいたい、そして有効なのが、『「ボールを重視した」ゾーンディフェンス』だ。私は2004年にドイツサッカー協会指導強化ビデオシリーズ「Modernes Verteidigen」(ビデオ3巻、現在はDVD3枚)を翻訳し、その後当時の自分のチームであったU17で試し、その後も引き受けたチームで試行錯誤しながらゾーンディフェンスを追求し続けて来た。今振り返ってみると、翻訳したビデオの中の字幕やアナウンサーの台詞、その行間を読む作業だったとも言える。

 

サッカークリニック12月号(11月6日発売予定)の守備の特集に、サイドでの1対1の守備戦術について「サイドで「1対1」の数的同数なら、相手をボールごとタッチラインで挟む」を掲載させてもらえるので、是非皆さんに購入していただき、内容に目を通してもらえたら嬉しい。写真とイラストを使い、わかりやすく説明するようにまとめたつもりである。

基本中の基本となる個人戦術だが、日本では行われていないやり方で、導入においては戸惑いもあるかも知れないが、自分の指導しているチームで是非試してみてもらいたい。

 

もし読者の皆さんが指導しているチームや選手たちで、いい手応えがあったら、是非この下にあるコメント欄へ気軽に感想を書き込んでもらいたい。よろしくお願いします。

続く1月号には、そこからの発展形となる「サイドでの1対2の守備のグループ戦術」を掲載してもらえる予定。

 

サッカークリニック2回に渡って説明する内容は、能動的な守備、つまり最初に書いた「仕掛ける守備」である。能動的と言っても、あからさまに体力に物を言わせて、アタックを繰り返すものではない。むしろその逆で、机の下で秘密裏に事(ボール奪取までの物語)を進め、相手チームを陥れ、ボールを効率的に奪おうというものだ。 つまり、それは

 

「攻撃はゴールをアタック、守備はボールをアタック!」

 

ということであり、『「ボールを重視した」ゾーンディフェンス』のモットーは、

 

「難しいことを頑張るのではなく、簡単なことで成功する!」

 

である。

 

どっちへ行くのか?わからないボール保持者へ対応するのは、難しい。要は、どちらかにしか行けないようにしてしまえばいいわけである。

そこで、ボールを持っている相手FWを意図した場所へ誘導する「間合い」と「角度」と「後退」、「個人の守備戦術における三種の神器」をマスターすることが大切となる。

最初はこの相手FWと自分(DF)をマグネットの同極同士に見立てて、マグネットの反発する力を利用して、非接触で相手FWの方向とスピードを制御することは難しいかも知れない。しかし練習を積めば、誰にでもマスターできることである。

ドイツで私が指導したチームでは、U13からこの守備の仕方を選手たちへ伝えたが、彼らもみんなマスターできている。


紹介が遅くなったが、写真は昨年講師をシリーズでさせてもらったINAC多摩川主催の指導者講習会コーチングアドベンチャー第7回における、実技での一コマである。フラットに並ぶフォーバックの陣形の確認を行っている。左から4人が攻撃側、続く4人がディフェンダーだ。

この日のテーマは最終回として「守備のチーム戦術」だったが、私はこの日初めて日本人によるゾーンディフェンスを見させてもらった。

ドイツでは見慣れた光景だったが、私にとってはとても新鮮な光景で、今も世田谷公園の背景と共に、このシーンの記憶は鮮やかに脳裏に焼き付いている。ディフェンダー役の選手たちが、皆さん『心からサッカーを楽しんでいる』と感じたことと一緒に。

 

ドイツのとあるクラブにいたときに、シーズンの終わりにクラブのお祭り的な行事として、私の指導していたU19が2軍チーム(成人)と対戦したことがある。

2軍チームはマンツーマンマークのディフェンス、U19は『「ボールを重視した」ゾーンディフェンス』。結果は5対2で、我がU19が勝利を収めた。

 

年少のチームが優位に試合を進め勝利するということは、やはりゾーンディフェンスがマンツーマンマークよりも優れた戦術であることの証であると、試合を通じて確信を得た。

U19の選手たちがシャワーを浴びているときに、一人の成人チームの選手が両手にマース・ビーア(1リットル入りのジョッキ)を持って、笑顔で更衣室へ乱入して来た。「お前らすごいよ!いいサッカーしてるなぁ。驚いたよ!これ、みんなで飲めよ!俺からのおごりだ!」と言いながら。

メリハリのあるサッカー

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最近、愛車のNew Beetleを車検に出した。
それに先立ち、車検の見積もりをフォルクスワーゲンのディーラーでしてもらった。色々と話していたら(部品交換など、悪いところがたくさん!で話が長引いた)、車の燃費の話になった。

 

「10.89 km/l?日本では、あり得ない数値!」

 

と言われた。ドイツで乗っていたNew Beetle(写真参照)の燃費を伝えたときのエグゼクティブアドバイザーの口からこぼれた言葉だ。

 

ドイツで乗っていたのは今乗っているものと全く同じ車種(2000cc)だが、現在のものから7年も古い製造年の車だった。しかし、この日本に生息している7歳若いカブト虫の燃費は、当初8.89 km/lだったものの、冷房を入れるようになってから7.6 km/lとガタ落ち。ドイツで使っていた車は、クーラーを入れても別段燃費に変わりはなかった、はず。

 

「そんな数値は日本では聞いたことがない」と言うエグゼクティブアドバイザーは、疑いからか?少しにこやかな顔つきになった。何がその違いの要因なのか?彼と一緒に探した。やはり道路事情の違いではないか、というところに話は行き着いた。考えてみれば、ドイツで車を使って外出するということは、ほとんどアウトバーンを走ることだった(高速代は一切発生しなかったので、気楽だった!)。

 

エグゼクティブアドバイザーによると、「短い距離でチマチマ乗っていると、燃費は伸びないんですよ」とのこと。都内で乗っていると、これに相当することになる。というのは、例え高速に乗ったとしても、制限時速が80km/時だからだ。ドイツなら制限時速が設定されていなければ、通常130km/時で走っていた。ミュンヘンでの練習に遅れそうなときは、一番左のレーンを150km/時で走った。無論、バックミラーに次に挙げる車たちが映ったら、すぐに車線を譲った。BMWアウディ、ベンツ、ポルシェ、カウンタックなど。

 

ひとしきりショールームで、話していて思い出した。町と町の間を結ぶ道路は、速度制限の標識がなければ、どこも100km/時だったことを。

ドイツはどんな都市であっても東京などは違って、町と町の間までも民家で埋め尽くされているということはない。町と町の間の景色はただひたすら野原と森で、ちょっとすれ違うには細いと思える道が曲がりくねっている。最初はかなり怖かったが、その道をお互いに(対向車も)100km/時で走り抜ける。

 

前置きがとーっても長くなったが、このことがサッカーにも関わっているとドイツに居たときに感じた。ドイツ人はサッカーだけに限らず、メリハリが利いている。きっと彼らは、日常の生活の中で「on」と「off」を使い分けて暮らしているからだろう。

隣町へ行く道ではアクセルを踏み込み100km/時まで速度を上げ、隣町へ着くと50km/時までスピードを落とす。街中を抜けると、またスピードを上げる。隣りの町に入ると、また速度をゆっくりにする。日頃の生活の中に、その繰り返しが定着している。

 

サッカーの練習では、まるで試合をしているかのように激しくプレーする。その激しさは、我々日本人の比ではない。そしてこの差は、一緒にプレーしてみないとわからない。残念ながら、今ここで言葉では表現できないし、伝えられない。

目一杯背伸びした状態でサッカーをしているような感じとでも表現したらいいのか?もちろん常にではないが、要所要所目一杯の速さと力でプレーする。1998年に初めてドイツのクラブで練習したときに、一年の中のたった一回の練習なのに、まるでワールドカップでの試合であるかのようにプレーする、主にぶつかってくると感じたことを、今も忘れない。

 

日本人は、なかなかこの「メリハリのあるサッカー」をプレーできない。これは、日本人が普段の生活の中で「メリハリ」を利かして暮らしていない、「メリハリ」とは無縁の社会に生きていることに起因するのではないだろうか。

 

例えば、ドイツ人とは喧嘩しても、大丈夫である。大丈夫というのは、その後の付き合いが喧嘩をきっかけに一切なくなってしまう、ないしはなんとなくやりにくい相手になってしまうということが、ほとんどないという意味だ。むしろ黙っていると、バカだと思われ、その後何も話題を振られなくなる。そのことの方が、むしろ頭にくる。

 

話が脱線したが、ドイツでは単純に、とことん言い尽くす、お互いに。だから後腐れがない。わだかまりがない。言いたいことを最後まで言い切ることができるので、言えなくて我慢したり、相手に気を使って語気の強さを加減するということはなく、その結果グツグツと煮え切らな思いを抱えることはほとんどない。思ったことをそのまま口にすればいい。

もし意見がぶつかるのであれば、お互いにドッカーン、ドッカーンってやり合い(燃えかすも残らないくらいに!)、そのあと冷静になって今後どうやっていくかを一緒に話し合うことができる。ぶつかった意見だけは、その後も話題に登れば対立するけれども、それ以外の部分での付き合い方は何も変わらない。

 

ドイツ人は言葉のコミュニケーションにおいても、メリハリを持っているのかも知れない。

生まれて初めての出来事

f:id:Kopfballmonster:20170908211828j:plainもう一昨日のことになるが、サッカークリニックの撮影を猿ヶ島スポーツセンターの体育館で行った。雑誌の取材やインタビューの経験はあったものの、実写映像の撮影は生まれて初めてだったため、準備から実施まで非常に緊張した。

結果的には良い指導者の方達に恵まれ、思いの外撮影は順調に進み、記事は素晴らしいものになると思われる(まだ、これから編集のため、詳細な判断はつき辛い)。編集者の高野さん、よろしくお願いします。

 

サッカークリニック12月号(11月6日発売)と1月号では「守備」が特集され、私の記事

 

「ゴールを守るのではなく、ボールを奪う」

人数をかけて(数的有利な状況で)、ボールへアタックをかける

 

が掲載されます。各号でのテーマは、

 

12月号:個人戦

数的同数 サイドでの1対1 FWから離れている

1月号:グループ戦術

数的有利 サイドでの1対2

 

とそれぞれ予定されている。

 

今回の撮影には、下記の指導者の方達(敬称略)に選手役をお願いし、協力してもらった。

皆さん、集中した撮影の現場、お疲れ様でした。ありがとうございました。

上記写真 前列左から:

久保田大介・代表(スエルテSC)、綾部淳コーチ(港北フットボールクラブ)、坂本、久道翔太・代表(ソーニョ掛川FC)、宮入駿コーチ(Ling FC依知)

後列左から:

江原健仁コーチ(FCしらゆりシーガルス)、大木洸・監督(Ling FC依知)、神宮寺拓コーチ(鳶尾ジュニアサッカークラブ)

写真撮影:

一場哲宏・監督(FCしらゆりシーガルス)

さて、撮影が終わりほっと胸を撫で下ろしていたら、嬉しいフィードバックが飛び込んできた。メール、フェイスブックメッセンジャー、いわゆる参加者からの「生の声」だった。

 

メールより(FCしらゆりシーガルス監督の一場さん)

本日は厚木の体育館にて守備の特集にお邪魔させていただき、ありがとうございました。
あんなに、分かりやすく丁寧に、しかも様々な表現で心をつかむ指導ははじめてです。勉強になりましたし、感激いたしました。
是非、今後とも交流をさせて頂き、色々と教えてもらいたいです。

 

フェイスブック書き込みより(港北フットボールクラブコーチの綾部さん)

坂本さん
貴重な体験をさせて頂きありがとうございました。
選手になった気で楽しませて頂きました!短時間で自分の中でも上手くなったような気がしています。なかなか身体能力がある方ではなかったので褒められたのは嬉しかったですよ!
今後ともよろしくお願いします

 

Instagram投稿記事より(ソーニョ掛川FC代表の久道さん)

守備の1vs1対応と2vs1対応のトレーニングをかつてドイツの育成現場で活躍された坂本さんを講師にドイツ式でみっちりと。
そして、ボールはやっぱりダービースター!! そもそもずっと当たり前とされてたり、小さい頃から身体に染み込ませて来たものが根本的に全く違うやんて話だし、そりゃ世界はまだまだ遠いですよって話。

育成現場から基準とスタンダードを変えていかなきゃと改めて感じさせてもらう素晴らしい時間でした。

 

フェイスブック投稿記事より(スエルテSC代表の久保田さん)

昨日はサッカークリニック12月号の撮影協力で厚木まで。ドイツで14年指導された坂本健二さんの守備オーガナイズ。とってもタメになりました。
そして今日は朝から全身が絶賛筋肉痛…ヽ( ̄д ̄;)ノ

今日のU-12の練習で「一人目の立ち位置」「4本の足で奪う」やり方をさっそく取り組んだら、選手達が「このやり方だと楽しい」「これいいわ」と、ノリノリでボールを奪いにいけるシーンが何度も。攻撃側の選手も「これやられると、行きどころがない」と。

これから選手達に合わせ自分なりにアレンジしながら、もっともっと守備を探究していこうと思います。

守備の考え方やそのオーガナイズに感銘を受けたのはもちろんだけど、坂本さんの人柄と、問題点を見事に的確にキャッチできる眼と、それをソフトに伝える話術のおかげで、フリーズされて問題点を指摘されても、少しもブルーな気持ちにならなかったのが、何だかとても印象に残りました。

それはきっと、もっと上手くなりたい、だからこの人にもっと教わりたい…っていう気持ちにさせられたからなんだと思う。
自分が教えてる選手にも、そう思われるようにならないとなぁ。

坂本さん、ありがとうございました

 

メッセンジャーより(スエルテSC代表の久保田さん)

 今日子供達との練習でさっそく取り組みましたが、先ほどフェイスブックに書いたように、かなり手応えがありました。練習中に「この位置から行けば、相手を一本足にできるよね」という名言が、ある子供から出てきました。周りの子達もそして自分も「あぁ、確かにそうだね」と…
こうして考え方を共有できれば、ますます上手くなるのだなと実感したところです。

おかげで「相手を攻撃してボールを奪う」という概念を子供達と一緒に持つことができました。これなら守備も楽しくなりますね。

 

一場さん、綾部さん、久道さん、久保田さん、素晴らしい言葉をありがとうございました。そして何よりも、久保田さんは早速ご自分のチームでの練習に取り入れられ、その効果を選手たちと一緒に確認されたとのこと、とても嬉しく読ませてもらいました。モダンな守備であるゾーンディフェンスを日本で広めていきましょう!


兎にも角にも、これほど褒められたことは57年間生きてきて生まれて初めてだったので、衝撃的なフィードバックとなり、強く心を揺さぶられ涙が溢れた。

ドイツサッカー協会の発行したゾーンディフェンスのビデオ(現在はDVD)を翻訳したことから始まり、ドイツで当時指導していたU17、そして後に指導したU19やU13で一生懸命に教えたことが今、身を結んでいるのだと思う。どのチームでもシーズンの初めはいつも講義から入り、導入するゾーンディフェンスについて説明したことは、今やいい思い出とも言える。何しろ、全てドイツ語でやっていたのだから。

今回の出会いから、いや心の揺さぶりから(?)指導者講習会を自分で企画し実施していきたいと考えるようになった。具体的になったら、またこのブログ、さらにフェイスブックなどでお知らせします。ご興味がありご都合のつく方は是非ご参加ください。

まずは皆さん11月6日書店へ駆け込み、サッカークリニック12月号を数冊鷲掴みにしてレジまで跳んでいってください。1指導者に1冊!よろしくお願いします。

成功で達成感を得る

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前回のブログで練習における日本人とドイツ人の違いについて書いたが、今回はちょっとその延長線上での話をしてみたい。

写真はミュンヘン東部にあるSV Heimstetten(エス・ファウ ハイムシュテッテン)のD-ユース(13歳以下)が、試合直後に優勝した喜びから人間ピラミッドを作ったときのものだ。16勝4分2敗で2位と8勝ち点差をつけ、3部リーグから2部リーグへの昇格を決めたシーズンだった。

 

苦労(疲労感)で充実感を得る日本人と、勝利(成功)で達成感を得るドイツ人

 

今夏休みで、サッカーのチームは合宿真っ盛りのシーズンだ。この季節になると、私が以前にお世話になったチームで合宿を控えていたある日、練習後に保護者の代表と話していて話が噛み合わなかったことを思い出す。

 

代表からのお願いは「今度の合宿では、帰りのバスの中で子供たち(選手たち)が全員寝てしまうような、そのぐらいきつめに練習をやってもらいたい。練習時間は2時間と言わず、もっと長くやってほしい。回数も1日に2回じゃなくて、3回でも4回でも構わない」というものだった。

 

ドイツでは青少年も90分間の練習をしているので、「私個人としては2時間の練習はすでに長過ぎると考えていて、90分で効果的な練習をしたい。もちろん合宿を通じて、選手全員を上達させたい」と答えた。

 

「ダメです。もっと長くやってください。去年の合宿の帰りのバスの中はとてもうるさくて、そこで思ったんです『ここでふざけているのではなくて、この子たちはもっと(長く、きつく)練習するべきだった』と。今年の合宿に臨んで選手たちは今皆、まるで声を合わせるかのように「俺はこの合宿で変わるんだ。上手くなるんだ」と同じことを言っています。その願いを叶えてあげてほしいのです」というのが、主旨だった。

 

ドイツでの話を参考に出してみても受け入れられず、朝礼台を挟んだ両者の話は平行線に終わり、結局その日に結論は出なかった。

 

そんな視点でドイツ人を見てみると、ドイツ人は勝利や成功で達成感を得ていると感じる。そのために、まっしぐらに突き進む国民であると。そして、できるなら苦労などしたくないと望んでいる。

つまり彼らが見ているのは、ないしは目標としているのは、例えば試合当日であれば、「その日の試合の勝利」だけである。そこへたどり着くために、各人がベストを尽くす。グループやチームとしての共同作業が必要であれば、それにも各自の持てるだけの力を存分に注ぐ。

 

この点において日本人は、違う場合が多いのではないだろうか?目先のことに眼が行ってしまう、きらいがあるからである。上の例で言えば、もちろん試合での勝利は達成したいのは山々だと思いながらも、現実の今目の前で次から次へと変化する試合の流れの中で、個々のプレーのことに終始してしまいがちではないだろうか?

 

目標を忘れてしまうと、個々のプレーにおいて、それがチームにとって有益なことなのか?無益なことなのか?判断し辛くなってしまう。つまり、目標を見失ってしまうということに陥る。

 

94年にミュンヘンへ行った際に、偶然にも「日本サッカーの父」と言われるDettmar Cramer(デットマー・クラマー)さんとばったり会ったときのことを思い出す。クラマーさんは当時ヨーロッパで最大にして最も施設の整った、素晴らしいSportschule Oberhaching(シュポルトシューレ オーバーハッヒング)の完成の様子を一人で見学に来ていた。

 

丁度そのとき、シュポルトシューレで開かれているサッカーキャンプの参加者で作った急造のドイツ人チームと日本から遠征して来ていたジュニア・チームとの間で、フレンドリーマッチが行われた。

すると試合が始まってある程度の時間が過ぎたとき、クラマーさんがくるっと後ろを振り向き、我々に言った「今ボールを日本人チームが持っているけど、攻めてるゴールを後ろへ引きずりフィールドから外してしまっても、日本人選手は誰もそのことに気づかず、そのままプレーを続けるよ」と。

 

どういうことか?と訊ねると「逆に、ドイツ人が攻めているゴールを外したら、その瞬間にドイツ人選手のプレーが止まり、「おーい!そのゴール使っているんだから、元に戻してよ!」というはずだ」と返って来た。

さらに続けて「昔私は日本代表を指導したことがあるから知っているけれども、この点が日本人の特徴的な気質なんだよ」との説明が付け加えられた。

 

ドイツ人は、できるだけ苦労はしたくないと思っている。だから、例えば専用工具が大好きである。我々日本人の感覚からすると、『その工程だけにしか使えない工具じゃ、必要ないのでは?』と思うくらい千差万別な、たくさんの工具を揃えることに躍起になる伝統的な血筋があるように見える。十分な準備をしている自分を、自ら誇りにさえ思っているような雰囲気を醸し出す。

 

ドイツ人は便利な工具を使って、早く仕事を終え、早く家へ帰ろうと考えている、と思える。その根本は、本当に人間として素直で会って、できれば働かないで生きていきたいという所から出発しているように感じる。

 

話が少し脱線したようだが、ドイツ人が目標へ向かいまっしぐらに駆けていく様は、我々日本人が見習わなくてはいけない点の1つだと思う。「猪突猛進」と揶揄される部分だが、その勢いたるや、尊敬の対象として十分の価値がある。

夏の合宿の話に戻すと、合宿でやるべき点を挙げて目標を立て、それを叶えるべく1日の予定を計画し、例えば合宿の帰りのバスの中で、どれだけ目標を達成したのか?について、選手たちも含め話し合う場にできればいいのではないだろうか?そこで、合宿に参加した全員でどれだけ目標へにじり寄ることができたのか?を確認し、達成感を共有することができたなら、最高なのではないだろうか?

 

そして例え、目標を達成できなかったとしても、逆に課題を見つけたとポジティブに捉えればいいと思う。チーム全員で、同じ問題意識を持てたことを喜べばいいのではないか?

 

どのみち人生においても、課題が尽きることはないのだから。
人間、死ぬまで勉強!

 

残り少なくなった夏休み、子供たちが素敵な思い出を作ることができるよう願っている。

パフォーマンスが向上しない?

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ブログを開設したのはいいが、はてさて何を書こうか?と考えあぐねてしまっていた。ふと、ある考えが、降ってきた。

折角日本へ帰ってきたのだから、ドイツでの生活やサッカーの指導で経験したことなど、いろいろあったドイツでの出来事を思い出しながら、時系列に関係なく思い出した順に書くと、きっと日本人の読者の方たちには面白いのではないだろうか、と。

 

ということで、まずは98年にドイツへ渡ってすぐの、ドイツで初めて指導したチームに関して書いてみたい。

隣り村にあるTSV Iffeldorf(テー・エス・ファウ イッフェルドルフ)でD-ユース(13歳以下)のチームの監督を、知人(ドイツ人指導者)の紹介から引き受けた。なお写真は残念ながら当時のそのチームではなく(写真のデジタルデータが、当時はなかった)、2003年に指導したFC PenzbergのC-ユース(15歳以下)のものです。あくまで、イメージとして見ておいてもらいたい。

 

さて、その13歳以下のチームを何回か練習をしてみて、日本での指導と比較して違和感を感じた。どこに?それは、ドイツ人選手は、なかなか上手くならなかったからだ。

 

「練習中にめきめき上達する日本人」と「なかなかパフォーマンスが向上しないドイツ人」

 

このことをさらに詳しく説明すると、「次の練習では、ほぼ元通りに戻ってしまっている日本人」と「前回の練習の状態からステップ・バイ・ステップで積み重ねて、確実に向上するドイツ人」とも表現できる。

 

当時、すぐにはその原因が何か?わからなかったが、ドイツで数年指導者活動を続けていくうち、おそらく国民気質の違いによるものであろうと理解するようになった。

ドイツ人は例え子供であっても、日本人と比較すると、非常に理屈っぽい。表面的にもよく喋るが、話すということは外へ出てくるだけのもの(言葉、考え)、ないしはそれ以上のものが頭の中に存在しているということだ。

 

そして、彼らは個人主義。学校は遅くとも14時までには終わり、家で昼食を取り、宿題をこなし、夕方のサッカーの練習へ顔を出す。

D-ユース(13歳以下)のチームの選手たちは、12歳〜11歳。日本で言えば小学校5年生、6年生の彼らであっても、毎日の生活の中の予定を自分で組み立てて暮らしている。宿題を終えなければ、親が練習へ行くことを許可しない中、日々の生活を自分自身でコントロールしながら過ごしている。

 

この辺りに、日本とドイツの違いが生まれる要素や、それを生み出す環境の差があるように思う。

 

この日本とドイツの差に気づいてからは、ドイツの選手たちが日本人のようにメキメキ上達しなくても、指導の際に焦ることはなくなった。

何故なら、彼らは着実に技術と戦術とコンディションを身に付け、ゆるい上達の曲線ながら、シーズンの中で確実に成長していくことを目の当たりにしたためだった。

ブログ開設宣言

一昨年前にドイツから帰国して、早くも約1年10カ月が経ちました。ドイツサッカーや私のサッカー観を多くの指導者の方などへ伝えるべく、人生初のブログ「健二がゆく〜志士迷走記録〜」を開設します。ご期待ください。
Nachdem ich von Penzberg(Deutschland) nach Tokio(Japan) zurückkam, verging es schnell schon fast 1 Jahr und 10 Monate. Um japanischen Fußballtrainer und Co. über deutschen Fußball und mein Gefühl über Fußball mitzuteilen, fange ich zum ersten Mal in meinem Leben an, ein Blog “Kenji geht” anzufertigen. Komm mal bitte ab und zu hierher, es zu lesen!

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